アベノミクスでにわかに注目を浴びる金融緩和政策。「日銀が大量にマネーを供給すれば、景気が回復する」。この本では、それに異を唱えている。
市場にマネーを大量に供給すれば、それが消費に回り、景気が回復する、というのはあまりに短絡的な考え方だ。私たちは将来に不安を持ち続ける限り、お金をもらってもそれを消費に回さず、貯蓄に回す。そうして、お金を好きなときに、もしくはいざというときに、使えるように備えておく。お金を持っておくことは、将来への安心につながるからだ。「人はお金そものもがほしい」。お金を持っていること
そう考えていくと、金融緩和政策で景気が良くなるとは思えない。まずは、将来に対する不安を取り除く、ということが景気回復策に他ならない。つまり、若者には雇用を増やし、お年寄りには介護や医療や娯楽のサービスを提供することだ。お年寄りには介護や医療や娯楽のサービスを提供することは、若者の雇用を増やす効果もある。若者の失業や、将来失業するかもしれないという不安が取り除かれれば、そのとき、やっとお金は貯蓄から消費に回る。
金融緩和より雇用を増やすことこそがデフレ脱却の道、ということだ。
私たちは誰かを嫌いになること、誰かから嫌われることは、つらく、不快で、いけないことだと考えがちである。著者はひとを<嫌う>ということはそんなにいけないことなのか、と疑問を投げかける。日常的に人を嫌いになるということは、好きになることと同様にごく自然であり、「嫌い」としっかりと向き合うことが人生を豊かにしてくれると説く。
「われわれは自他のうちに『嫌い』を確認したら、いたずらに恐怖心を募らせたり、無理やり抑圧することはやめて、冷静沈着に正視し、その凶暴性を適当にコントロールし、それを自分の人生を豊かにする素材として活用すべきでしょう。」
私たちは、ひとに嫌われるのはイヤだが、ひとを嫌うことは何かと理由をつけて正当化しようとする。その不平等はわたしたちの心を歪ませる。それではなく、ひとを嫌うことはごく自然で当り前なことだと思えば、あっさりとひとと付き合っていくことができるし、対立しても妬みや憎しみや自己嫌悪という負のスパイラルに陥ることもないだろう。
地震列島日本に暮らす我々はいかに自然と向き合うべきか――。災害に対する備えの大切さ、科学と政治の役割、日本人の自然観など、山折哲雄さんが編んだ寺田寅彦さんのエッセイ集。関東大震災、第二次世界大戦以前に書かれたものにも関わらず、現代の日本人に向けて書かれたものかと思うくらいに腑に落ちる。
国防とは、他国の侵略行為から国を守るだけではない。地震や津波といった天災からこの国を守ることもまた国防であり、地震や津波といった天災の多い日本という国を守るという意味では、軍隊を持つよりも地震や津波といった天災への備えをしていった方がよっぽど、この国を守る、という目的を達成できる。平和は外交的努力によってもたらすことができるが、地震や津波といった天災は問答無用でこの国を脅かすからだ。
国防とは他国と戦える軍隊を持つことだという、短絡的で浅はかな脳みそしか持ち合わせていない、アベとかイシバとかコウムラとかいうひとたちに読ませたい本だ。
著者は自ら糖質制限を試し、効果や危険のなさを確かめ、その上で、糖質制限のメリットについて説く。
さらに、栄養素としての糖質の性質や、カロリーという概念や栄養学のいいかげんさ、そしてブドウ糖からみえてくる生命の進化などについて独自の考察を進めて行く。
やや多風呂敷を広げ過ぎていて、糖質制限についてより知りたい読者には肩すかしを食らう感がある。
ただ、著者の糖質からみた農耕の起源についての考察が面白い。たまたま小麦が生い茂る地に進出した人類が小麦の「甘さ」という誘惑に負けて小麦の栽培を始める。まさに、人類にとっての禁断の実は林檎ではなく、小麦だったのである。そして、小麦という禁断の実を食した人類は、穀物により滅亡への道をたどりつつある、と著者は言おうとしている。
とはいえ、人類が禁断の実を手にしたからには、それと上手くつきあっていかなくてはならないのだろう。
私も試しに糖質制限というか、3食のうち2食を主食抜きを実践している。さて、その効果は・・・まだ現れておりません。
雑誌「SIGHT」の2009年7月号から2010年11月号まで連載された、内田樹さんと高橋源一郎さんの対談記事をまとめたもの。
当時の政治状況について内田さんと高橋さんが語ったもので、お二人の未来予測も大きく外れたりもしているのだが、例えば、小沢一郎=吉本隆明説だとか、対談の中からふと湧いて出た思いつきかもしれないが、ふたりの対談の相乗効果が面白い。
一時的であれ、自民党が与党第1党の位置を失い、民主党が政権を担ったことにより、この国の政治システムがいかに欺瞞に満ちていて、ガタがきているか、ということが浮き彫りになった。これが民主党の最大の功績だろう。まさに、鳩山さんが首相で、本当に良かった、である。
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