『本当の仕事の作法 価値観再生道場』(内田樹,名越康文,橋口いくよ著)生命力を落とし、命を削り、ましてや会社の肥料として使い捨てられるようなことはしないこと。
思想家の内田樹さん、精神科医の名越康文さん、作家の橋口いくよさんが、社会人として働くすべての人に必要な仕事の心得について、語り合ったものをまとめたもの。このメンツであれば、それがハウツー本であるはずも、自己啓発本であるはずもない。
面白いと思った話題を2つ。ひとつは、仕事を「通勤問題」から捉えたところ。私は朝の満員電車が嫌いで、今でもどうして毎日こんな嫌な思いをしなけらばならないのだろう、と思いながら通勤している。決して満員電車に慣れることはない。ときには、今の仕事はこんな嫌な思いをしてまでするだけの価値があるのだろうか、と思う時すらある。満員電車は、私の生命力を落としているし、まさに命を削っている。
それと、ブラック企業について内田さんのこの一言が的確すぎる。
内田「ブラック企業というものは労働者の生命力を肥料にして肥えているんだよ」
「即戦力、求む」という会社に入ってはいけない。それはその会社が社員を育てるという思想を持っていないということであり、その会社が社員を育てるのではなく、社員を会社の利益のための「肥料」として使い捨てようとしている、ということだ。これから就職しようとしているひとはそのことを心しておきたい。
稼ぐため、生活していくために生命力を落とし、命を削り、ましてや会社の利益のために使い捨てられるような生き方はしないようにしたい。
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