『三国志 第十巻』(宮城谷昌光著)死せる孔明は生ける仲達を走らせはしなかった。
蜀を支えてきた丞相・諸葛亮が五丈原で薨じ、遺された皇帝・劉禅と群臣は不安に包まれ、蜀は衰退の道を歩み始める。
魏でも皇帝・曹叡が急死。後に立ったのは八歳の曹芳。幼帝を輔弼するのは司馬懿と曹爽の二人。司馬懿は軍功を重ねて英名を高める一方、曹爽は取り巻きたちを集め司馬懿に対抗し、蜀への遠征を始める。
宮城谷三国志は、物語やゲームでしか三国志を知らないひとには目からウロコの三国志である。宮城谷さんはバイアスのかかった物語を排除し、物語を再構築する。
ゲームの世界でも諸葛孔明は最高の軍師であるが、宮城谷さんはそのように孔明を評価していない。五丈原で死せる孔明は生ける仲達を走らせ(敗走させ)はしなかったし、魏延は決して裏切り者ではなかったし、楊儀は諸葛亮の遺志を継いでなどいかなった。
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