『努力しないで作家になる方法』(鯨統一郎著)とにかく書き続けることが彼をデビューさせ、書き続けたことがデビュー後の作家生活を支えている。
「僕には小説しかない、小説家になるしかないんだ。」という想いを胸に、作家としてデビューすることを目指続けて早九年。ライバルたちが続々とデビューしていく中、なかなかデビューする機会に巡り合わない伊留香総一郎は、妻と幼い息子との生活を支えるため、昼間は営業マンとして働き、夜に執筆活動を続ける。フラフラになりながらも、またお金に困って首が回らなくなっても、夢を諦めかけても、それでも、自分の才能を信じ続けて、彼は書き続けた。
彼が書店でバイトをしていたとき、お客さんに「邪馬台国(関係の本)はどこですか?」と訊かれ、「九州です。」と答えるくだりが面白い。著者は後に畿内説でも九州説でもないトンデモナイ仮説を立て、それがデビューにつながるんだけれども、何がきっかけになるのか、人生とはわからないものだ。とにかくアイディアのストックをため続けることが、デビューした後の彼の作家生活を支えているのは確かだ。
「努力しないで」というのは一種のレトリックだろうが、とにかく書き続けることが彼をデビューさせ、書き続けたことがデビュー後の彼の創作活動の糧となっていることは間違いないだろう。
私は『邪馬台国はどこですか』という作品に巡り合って以降、鯨統一郎さんの作品は(単行本以外は)ほぼすべて読んできている。正直、当たり外れはあるけれども、デビュー作を好きになった作家は、嫌いになれない。
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