『成長から成熟へ さよなら経済大国』(天野祐吉著)国も人も1番だ2番だと争うのではなく、「別品」になりたいものだ。
若い頃、「広告批評」という月刊誌を毎月購読していた。別に広告業界への就職を考えていたわけではないのだが、淀川長治さんとおすぎさんの映画批評も楽しみだったし、橋本治や糸井重里をはじめとする執筆陣が豪華で、企画モノも面白ろかった。その雑誌の編集長が天野祐吉さんだった。
その天野さんは昨年2013年にお亡くなりになった。この本は、おそらく天野さんの最後の本だろう。広告は社会の窓。60年にわたりその広告の最前線に立ち続けた天野さんが、広告が伝えてきたものから時代が何を要求してきたのか、また私たちの消費についての価値観がどのように変わってきたのか、などをまとめている。
最後に天野さんは「別品の国」という言葉を使う。日本は経済力や軍事力で1番だ2番だと争う国ではなく、そういう争いとは無縁だけど個性が引き立つ「別品」の国であるべきではないかと。アベさんは美しい国だと言っているけれど、結局は1番だ2番だと争う国にしたいようだが、そういう争いをしている限り、美しい国にはなれそうにない。
国も人も1番だ2番だと争うのではなく、「別品」になりたいものだ。
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