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2014年2月28日 (金)

『永続敗戦論――戦後日本の核心』(白井聡著)「日本は戦争に負けた」ということを受け容れない限り、戦後は終わらない。

 「私らは屈辱のなかに生きている」。大江健三郎が引いた中野重吉の言葉から、この本は始まる。

 私たちは8月15日を「終戦記念日」と呼ぶ。終戦と言うと、戦争が終わって平和になって良かったね、という安らかな気持ちになれるかもしれないが、それは同時に私たち日本人が無謀な戦争を引き起こし、そして沖縄を占領され、焼夷弾で国土が焼き尽くされ、広島と長崎に原子力爆弾を落とされ、若者にバクダンを背負わせ、天皇陛下万歳と叫ばせ敵に突っ込ませ、捕虜になることを許さずに徴兵されたひとたちを自決させたことを忘れさせている。アベとかイシバとかいうひとたちは、そういう歴史はなかったことにしたいと思っているに違いない。

 日本は1945年8月15日に戦争に「負けた」のだ。天皇が耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍んでくれ、というから戦争を止めたのではなく、これ以上戦争を続けると日本という国がなくなるところまで追い詰められて、「無条件降伏」という屈辱的な条件を飲まざるを得なくなって「敗戦」に至ったことを忘れさせている。私たちはアメリカが広島や長崎が原子力爆弾の実験場にしたことを、屈辱と思ったりしないが、これを恥辱と感じないかぎり、戦後は終わらないかもしれない。同じように、福島の原子力発電所の事故を未だに収束に向かわすことのできない政府を恥じだと思わない限り、戦後はいつまで経っても終わらないのかもしれない。

 「負けた」という事実に目を背けた結果、日本はアメリカに従属することでその面目を保ってきた、という構造は敗戦の日からずっと続いている。戦後は終わってはおらず、今もなお戦後は終わっていない。

 この本で私が一番興味を持ったのは、第二章第一節の領土問題について考察された部分だ。尖閣諸島、北方領土、竹島の問題が取り上げられている。著者は歴史的な経緯を見なおすと、仮に日本が国際司法裁判所にこれらの領土問題の解決を上申した場合、竹島は日本の領土と認められるだろうが、尖閣諸島はグレー、北方4島のうち歯舞群島と色丹島は日本に、国後島と択捉島はロシアの領土に帰属するという判断になるのではないか、という。
 一方的にこれらは日本の領土と主張するだけではなく、歴史を振り返って議論していくことが重要だろう。そして、そういう議論を妨げているのも「日本が戦争に負けた」ことを認めたがらない態度に原因がありそうだ。

 領土問題を解決させる最も短絡的な方法は「戦争」である。「尖閣諸島」の問題で日本と中国が対決するような局面がもし来たとして、安保条約を結んである同盟国アメリカが日本を援けてくれるだろう、と思ったら大間違いだ。アメリカがそんな小島のために中国と全面戦争になるような事態に喜んで首を突っ込むだろうか。そうなればアメリカは日本を間違いなく見捨てる。

 アメリカが日本を見捨てることをビビっていては何時まで経っても戦後は終わらない。こういった問題をひとつひとつ、根気よく解決していくことで私たちは戦後から抜け出せるのかもしれない。もちろん、戦争という手段ではなく、解決することだ。TPPの問題も然り。アメリカについて行けば間違いはない、という思考からいい加減に抜け出そう。


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