『東京ピーターパン』(小路幸也著)自分の「保身」を忘れたとき、奇跡は起こる。
冒頭、人身事故の場面から始まる物語。ひき逃げしまったひとのその後は謎のまま、物語は進んでいく。伝説のギタリストで今はホームレスの辰吾、メジャーを夢見るバンドマン・小嶋、彼らを巻き込んでひき逃げしてしまったサラリーマンの石井が逃げ込んだのは寺の土蔵。そこは引きこもりの高校生・聖矢の住処だった。彼らを結び付けるのは聖矢の姉でOLの茉莉。
年齢も人生もバラバラ、けれど唯一の「共通点」を持つ彼らが出会ったとき奇跡が起こる。
登場人物がひとり、またひとり登場するたび、ああ、これは最後にバンドをやる話になっていくんだろうな、と想像がつく。それぞれ、自分の「保身」のために振る舞ってきた彼ら。そんな彼らが一歩だけ自分の殻を破って出てきたとき、奇跡が起こる。
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