『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q EVANGELION:3.33 YOU CAN (NOT) REDO.』私たちはやり直しの効かない世界で、ただ前に進んでいくしかない。
DVDで鑑賞。
『ヱヴァンゲリヲン』をリアルタイムに観ていたひとたちには評判の悪い「新劇場版」。「序」はこれまでの『ヱヴァンゲリヲン』を引き継ぎつつ、「破」でこれまでの『ヱヴァンゲリヲン』とは違う物語に進むことを示した。そして、この「Q」では、もはや別物の『ヱヴァンゲリヲン』が展開されていく。これが従来の『ヱヴァンゲリヲン』ファンには受け入れられないらしい。
私は幸運にも(?)『ヱヴァンゲリヲン』をリアルタイムで観ていない。なので、素直に「こういうのもアリだよね」とすんなり受け入れられる。そして、すでにいるはずの観客の期待を裏切る(正確には期待を越える)ことに敢えて挑戦する、という心意気を感じられ、私はこの「新劇場版」が好きである。
ガンダムを作ったトミノさんが、「新訳」と称して作った「Zガンダム」がトミノさんお得意の切った貼った(編集)で、しかも劣化版でしか過ぎなかったことを思うと、庵野監督の「新劇場版」という挑戦は賞賛に値する。
内容は、14年間宇宙空間を漂っていたシンジ君がアスカの手によって帰還。しかし、浦島太郎のシンジ君は失われた14年後の状況が全く理解できず(←これは観客も同じである)、オトナたちに拒絶されながらも、そんな彼に救いの手を差し伸べてきたカヲル君の手を握り返す。差し伸べられたカヲル君の手にかすかな「希望」を見出したシンジ君は、そのかすかな「希望」にしがみつく。そして、状況をさらに悪化させてしまう。
すべてはゲンドウ君の手のひらの上? 私たちはやり直しの効かない世界で、ただ前に進んでいくしかない。
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