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2014年1月10日 (金)

【安吾を読む】『天皇陛下にささぐる言葉』「人間の値打ちというものは、実質的なものだ。」

「人間の値打ちというものは、実質的なものだ。天皇という虚名によって、人間そのものの真実の尊敬をうけることはない」

天皇家は日本で随一由緒正しき家系であるかもしれないが、天皇がそれにより尊敬されている、ということではない。天皇が尊敬を集めるのはそういうことではなく、人柄だとか、社会的な実績だとか、そういうものであるべきだ。
3.11の震災の後、被災地の避難所を訪れた時の総理大臣が逃げ出すように避難所を後にしようとした姿を私たちは観た。一方で、被災者ひとりひとりに声をかえられる天皇の姿を私たちは観た。マスメディアのバイアスがかかっているかもしれないが、果たして、どちらが尊敬に値するひとだったのだろうか。

今の天皇は象徴制という仕組みの中で初めて即位された天皇である。そして、今の天皇は象徴制という仕組みの中で、天皇がどうあるべきか、深く考えていらっしゃるのだと私は推察する。だから、あの震災の後の天皇の言葉が私の心に届いたのだ。その時、私は初めて、天皇というものに実質を観たような気がした。

「然し、日本は負けた、日本はなくなった、実際なくなることが大切なのだ。古い島国根性の箱庭細工みたいな日本はなくなり、世界というものの中の日本が生まれてこなければならない。」

日本は戦争に負けたが、天皇制は残った。象徴天皇制という形で。

先の秋の園遊会で、天皇に「直訴」した若い参議院議員がいた。彼は反原発を訴える、いわば社会を変えたいと願う若者であったのだろうが、今やなにも「天皇への直訴」が政治的に有効であると感じていた、ということが私には驚きだった。戦前ならいざ知らず、象徴となった天皇に統治権がないにも関わらず、である。天皇に直訴そればなんとかなるんじゃなないか、という思いを私たちが心のどこかで持ち続ける限り、安吾の言う「世界というものの中の日本」は生まれてこないのではないだろうか。

天皇を名実ともにひとりの人間としたとき、私たちは新しい日本人に、この日本という国が新しい国に生まれ変わるのかもしれない。しかし、私たちはまだまだ変わることができないままでいる。


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