『純平、考え直せ』(奥田英朗著)自分の世界を動かすのは自分しかいない。例えそれが、引き金を弾くことだったとしても。
気のいい下っ端やくざ坂本純平は、喧嘩っ早いが女に甘い男前。歌舞伎町ではちょっとした人気者の彼が、対立する組の幹部の命を獲ってこいと命じられた。そのことを一夜をともにした女についもらしてしまったことから、ネット上には忠告や冷やかし、声援が飛び交う。
ここまでの紹介文を読んで、純平がネット上の言葉で考え直したとか、ネット上で好き勝手に言っていたひとたちが団結して純平が殺人を犯すのを阻止しようとする話かと思いきや、さに非ず。結局、ネット上の言葉など、純平の心には届かない。ネット上の言葉など、雑音にすぎない。
純平に限らず、私たちは自分たちの周りの思惑で自分が動かされているのでははないのか、という思いに戸惑うこともあるだろう。でも、自分の世界を動かすのは自分しかいない。例えそれが、引き金を弾くことだったとしても。
« 『ブラックジャックによろしく 12』(佐藤秀峰作)いわれのない差別が彼の居場所を奪っていく。 | トップページ | 『偉大なる、しゅららぼん』(万城目学著)ある言葉に違和感を覚えれば、この物語のどんでん返しが予想できたりするかも。 »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 【安吾を読む】『木枯の酒倉から 聖なる酔つ払ひは神々の魔手に誘惑された話』「俺の行く道はいつも茨だ。茨だけれど愉快なんだ。」(2014.07.11)
- 『金融緩和の罠』(藻谷浩介・河野龍太郎・小野善康著、萱野稔人編)金融緩和より雇用を増やすことこそがデフレ脱却の道。(2014.07.10)
- 『ひとを“嫌う”ということ』(中島義道著)ひとを「嫌う」ということを自分の人生を豊かにする素材として活用すべき。(2014.07.09)
- 【安吾を読む】『街はふるさと』「ウガイをしたり、手を洗ったりして、忘れられないようなことは、私たちの生活にはないのです。」(2014.07.08)
- 『天災と日本人 寺田寅彦随筆選』(寺田寅彦著,山折哲雄編)地震や津波といった天災からこの国を守ることこそが「国防」である。(2014.07.04)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント