『レイヤー化する世界―テクノロジーとの共犯関係が始まる』(佐々木俊尚著) 「場」を運営している企業体こそが、権力の源泉となる。
情報テクノロジーの革新は、これまで自明のものとされてきた社会のあり方、国家のあり方を変えていく。むしろ、今自明のものとされる国民国家こそ、その成り立ちから特殊なものだと、著者の佐々木さんは言う。その上で、「権力は、国民を法律と道徳でしばる国家から、人々の行動の土台となる<場>へと移っていく」と言う。
今、起きていることは、「グローバル化」。無国籍というより国籍というものに囚われない巨大企業に富が集中し、それが国民国家という枠そのものを形骸化させている。そして、こういう国民国家に代わるものとして、グーグルやらフェイスブックやらといった「<場>を運営している企業体こそが、権力の源泉となる」という事態が起きている。
そういう世界の中で、私たちはどう生きていけばいいのか。著者は、このゲームから逃れられないのだから「このゲームに乗れ」と言っている。このゲームに乗るものは、超国籍企業に利用されることになるが、それならばそれを利用しろ、と言う。つまりは共犯者になることで、これからの世界を生き抜け、といっている。もっともな意見のようにも思える。しかし、私は、このゲームに乗らなくても生きる術があるのではないか、と考えてしまう。
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