『カンブリア宮殿 村上龍の質問術』(村上龍著)村上龍の想定する文脈の中に収まらない経営者たち。
最近はすっかり作家というよりこの「カンブリア宮殿」のインタビュアーとして認知されている村上龍。その村上龍はこれまで300人以上の経営者にインタビューをし、経営者たちの人間的魅力や成功の秘訣を聞き出してきた。
私たちが受けてきた教育は、答えを出すことだけを求められてきて、質問すること、問いを立てることを、その重要性を学んでこなかった、と村上龍は言う。この指摘は正しい。質問しようとすると、口答えするなとか、黙って俺の話を聞け、だのと言われたりもして。そうやって質問を封じられてきた。
村上龍は、対談相手や企業の歴史を「文脈」として把握し、空間や時間の変化・流れの中で捉えようとする。ベストセラーになった阿川佐和子さんの『聞く力』では、阿川さんは相手に気持ち良く喋ってもらうことを第一に考えていたが、村上龍の質問術は、自分の訊きたいことを訊く、ということである。それは自分の想定する文脈の中に相手を押し込める、という作業なのかも知れない。
しかし、手ごわい相手もいる。村上龍の想定する文脈の中に収まらない経営者たちだ。そして、そういう経営者に出会えたとき、村上龍は嬉しそうだ。そして、そういうものを「他者と出会う」、とブンガクでは言う。
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