【安吾を読む】『天皇小論』科学の前に公平な一人間となること。
「日本的知性の中心から封建的欺瞞をとりさるためには天皇をただの天皇家になって貰うことがどうしても必要で、歴代の山陵や三種の神器なども科学の当然な検討の対象としてすべて神格をとり去ることが絶対に必要だ。」
日本の歴史は、藤原摂関家に始まる前から最近では薩長、軍部、自民党に至るまで、為政者たちが天皇というものを利用し続けた歴史である。GHQは天皇の戦争責任を問わなかったが、アメリカだって日本の占領統治のために天皇を利用したと言える。天皇というのはそういう権力構造の機関としての役割を果たしてきたが、天皇というものが為政者たちの隠れ蓑となり、為政者たちの責任の所在を曖昧にしてきた。徴兵制を復活させていざとなれば戦争をしたがっているひとたちだって、それとセットで憲法の草案には国家元首は天皇だと言いたがっている。もし彼らが戦争を始めても彼らは天皇の名のもとに戦争をするつもりであって、彼ら自身は責任を取らないだろう。そういう政治的に利用されかねないお立場から自由になることは天皇家のためでもあると私は思う。
また、山陵などは宮内庁の管轄で、発掘などの調査がままならない。これが日本の古代史の研究を妨げている要素の1つになっている。科学的な検証の結果、○○天皇陵と呼ばれているものが天皇家のお墓ではない、という結果が出るかもしれない。しかし、もしそうなったとしても、天皇家の名誉と国民の天皇に対する敬意は揺るぎないものだと私は思う。
最近では天皇陵を世界遺産にするためにイルミネーションをつけようと言っているおバカさんが大阪の方にいるそうだ。こういうひとはまず、自分の家の墓を電飾してみてはいかがだろうか。松井家の墓は世界遺産にはならないが、ご近所さんの笑いものにはなることは間違いない。
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