『橋』(橋本治著)娘は母親によって作られる。
橋本治の「橋」という、なんともゴロの良いタイトルの作品。『巡礼』と同じく「昭和」というものを描いた小説。雪国で育った2人の女が犯罪を犯すまでを描いているが、彼女たちの犯罪は、私たちが知っている有名な事件を下敷きにしている。
その有名な事件を下敷きに、橋本治は、その犯罪を犯した少女たちは、こんなふうに育ったんじゃないの、と仮想的に再構築している。村上龍は、女は父親に愛されていたかどうかによってどういう人間になるかが決まる、と『心はあなたのもとに』という小説でも繰り返し述べていた。しかし、橋本治は女がどういう人間になるかは母親という要素が大きい、と言っているようでもある。橋本治の小説の中では、父親というのは娘にほとんど影響を及ぼさない。この小説でも然り。
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