『電動夏子安置システム・シアターグリーン3劇場連動企画』境界線を越えたとき、世界は音を立ててガラッと変わる。
電動夏子安置システム・シアターグリーン3劇場連動企画
第28回公演「檻の中にいるのはお前の方」(BASE THEATER):青券
第29回公演「机の上ではこちらが有利」(BOX in BOX THEATER):黄券
第30回公演「随分と線引きの甘い地図」(BIG TREE THEATER):赤券
日程:2013年10月23日(水)~27日(日)
会場:シアターグリーン(池袋)
演出:中山隼人
出演:小原雄平、道井良樹、なしお成、岩田裕耳、横島裕、添野豪
堤千穂、小舘絵梨、新野アコヤ(宝井プロジェクト)、志賀聖子、高田淳(X-QUEST)、田口愛、谷仲恵輔、瀬尾卓也(富良野GROUP/東京イボンヌ)、今村聡(ユーキース・エンタテイメント)、涌井友子、セキュリティ木村(劇団ビタミン大使「ABC」)、小平伸一郎、山村真也、林佳代、片桐俊次、羽賀佳代(中村JAPANドラマティックカンパニー/CHANCE)、高橋大輔(プロダクション・タンク)、犬井希美、関田剛志、片桐はづき(箱庭円舞曲)
中村JAPANドラマティックカンパニーとCHANCEのメンバーである羽賀佳代さんが出演している舞台を観に、池袋のシアターグリーンに行ってきました。
↓カンバンをパシャリ。
これは、劇団「電動夏子安置システム」が、シアターグリーンの3劇場を貸し切って、その3劇場で同時進行する芝居をする、というもの。同じ建屋の中に3つの劇場(1F:BASE THEATER、2F:BIG TREE THEATER、5F:BOX in BOX THEATER)をもつシアターグリーン。出演する役者たちはこの建屋を駆け上がり駈け下りて3つの芝居を並行して進めて行く。
役者の出演時間は2時間だが、同時に3本の芝居をしているわけで、その労力も普段の3倍ではないだろうか。いや、それに出番に間に合うように上へ下へと駈け廻らなければならないので労力は3倍以上だろう。
私が観た順番は、「机の上ではこちらが有利」(黄券)、「随分と線引きの甘い地図」(赤券)、「檻の中にいるのはお前の方」(青券)の順。羽賀佳代さんに「観る順番はお任せします」と予約をお願いしたら、この順番になりました。そして、成程、佳代さんの芝居を観るにはこの順番がベストだったかと。
1本だけ観ても芝居として成立しているが、それでも「この人、誰?」と思ってしまったり、「このひと、どうしてキャラ変してんの?」と不思議に思ってしまったりする場面もある。2本目、3本目と観進めることにより、「こういうことだったのか!」と納得したり、また前に観た芝居との繋がりがわかってムフフとしてしまったり、3本観て良かったなあと思いました。
私的にハマったのは、ノーベン行政官(横島裕)と秘書官のミド(堤千穂)とのコンビ。自己愛の塊で実質的に何の権限もない地位に不満を募らせているノーベンと、孤児であった自分を育ててくれたノーベンのためなら自己犠牲をも厭わないミド。しかし、ミドが人間ではなく人間が作りだした道具(AL)だと知りノーベンは態度を豹変する。さらに、ノーベンもまた自分が人間ではなくALだということを知ってしまう。それにより、彼らは新しい関係を再構築していく。この過程を描いて行くこの2人のやりとりが面白かった。
1つの街を2つに隔ててしまった国境。その境界線こそ、この芝居の肝である。自分(および自分が属する共同体)と他者を隔てる境界線。その境界線が様々な混乱を引き起こす。そもそも何故そこに境界線があるのか、そう根本的な問いかけをしたとき、これまで前提としてきた世界がガラッと変わる。まさに音を立てて古き世界が崩れ去り、新しい世界が広がる。
さて、我らが羽賀佳代さんである。彼女の役どころは、国境警備隊に新たに配属となった兵士・ビスコ。「机の上ではこちらが有利」(黄券)では、冒頭、彼女が赴任することにより、この舞台となる町の特異性が浮かび上がる。彼女は任務と上官に忠実で、規律を破るものを見逃すことができない兵士である。そんな彼女がこの町の在り方、ひいては自分の在り方に疑問を抱き、そして変わっていく物語が「随分と線引きの甘い地図」。そのチェンジングポイントを描いているのが、「檻の中にいるのはお前の方」の1場面。
私が中村JAPANやCHANCE以外で佳代さんの芝居を観るのは2度目。普段は歌ったり、踊ったり、パフォーマンスをしている佳代さんを観慣れているいるが、その時の表情とは違った、かなり集中した引き締まった表情を見せてくれていた。それがこの頑ななビスコの役に合っていたように思う。コミカルな場面はお手の物。あとは、チェンジングポイントの前後でもう少し変化があった方がお客さんには伝わりやすかったかもしれない。
ともあれ、私は中村JAPAN、CHANCEのメンバーにはどんどん外に出て勝負して欲しいと思っている。今回の佳代さんに倣って他のメンバーももっと外で挑戦して欲しいし、佳代さんがまた別の芝居に出ることも楽しみにしたい。
« 【安吾を読む】『坂口流の将棋観』「何事によらず、実質が心棒、根幹というものである。」 | トップページ | 『出光佐三 反骨の言魂 日本人としての誇りを貫いた男の生涯』(水木楊著)海賊と呼ばれた男は青臭い理想を生涯貫いた愚直なひとだった。 »
「芸能・アイドル」カテゴリの記事
- 青山円劇カウンシルファイナル『赤鬼』(2014/06/04-15)いつか、黒木華の夜長姫を観てみたい。(2014.06.23)
- NO-STyLe-GArden~ノスタルジア~第5回公演『昼下がりにみた夢は…』おせっかいすることの大切さ、おせっかいされることのありがたさ(2014.05.22)
- Bunakamura25周年記念『殺風景』最初から最後まで嘘臭い匂いのする家族の物語。(2014.05.07)
- 『酒と涙とジキルとハイド』「ハイド氏に変身する新薬は、あります!」(2014.04.19)
- 『神なき国の騎士―あるいは、何がドン・キホーテにそうさせたのか?』光溢れる国のドン・キホーテ。(2014.03.17)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント