『「学歴エリート」は暴走する 「東大話法」が蝕む日本人の魂』(安冨歩著)歴史と言うものを、自分が生きているまさにこの時代を作ったものとして捉え直してみたい。
『もう「東大話法」にはだまされない 「立場主義」エリートの欺瞞を見抜く』に続く、+α新書「東大話法」シリーズ第二弾。編集者との四方山話をまとめたものであるが故に、話題が拡散してしまいややまとまりがない印象もあるが、興味深い示唆に富んでいる。
「東大話法」の元となる「立場主義」というものが太平洋戦争に確立され、それが戦争を生き残った「学歴エリート」たちの手によって引き継がれた、という指摘は興味深い。彼らは「もはや戦後ではない」という「東大話法」によって戦争に関与したという過去を断ち切ろうとして、「経済戦争」という新しい戦争を仕掛け、それが人類史上稀にみる経済成長という大戦果を生みだす。
しかし、それは今や高速道路のトンネルを崩落させ、原子力発電所の事故を起こたりと、至るところにガタが来ている、みせかけだけの繁栄であったことが明らかになってきている。私たちがまずすべきはそのありのままの現実を受け入れる、ということなのだろう。
この本の試みが面白いのは、歴史と言うものを、自分が生きているまさにこの時代を作ったものとして再認識しようとしていることだろう。歴史には一国の歴史、その地域の歴史、はたまた人類誕生からの歴史、さらに地球誕生からの歴史、と様々な見方がある。しかし、この本のように自分が生きている「いま・ここ」につながるものとして歴史を捉えなおす、と言う作業は有益かもしれない。
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