『安吾さんの太平洋戦争』(半藤一利著)太平洋戦争と坂口安吾を結びつけようとしているけれども、アンゴ先生、なかなか手ごわい。
著者は坂口安吾の弟子を自称し、歴史タンテイを名乗っている。一時期アンゴ先生の担当編集者だったという肩書で、アンゴ先生の弟子だとか、歴史タンテイだとか自称する不届きなヤツだ、しかもこの方は長州嫌いのようだ、と思っていたので単行本が発刊されたときはムシしてきたのだが、題材として面白いと思っていたので、文庫になって読んでみた。
私は坂口安吾の著作はひとおとり読んでいる(全集を読んだ)のだが、それが戦前に書かれたものなのか、戦時中に書かれたものなのか、戦後に書かれたものなのか、あまり意識して読んだことはなかった。自称歴史タンテイ殿も一生懸命、太平洋戦争と坂口安吾を結びつけようとしているけれども、アンゴ先生、なかなか手ごわい。馬鹿どもが始めた戦争に我関せず、しかしこの戦争で日本は滅びるだろうから自分もまた日本とともに滅びよう、しかしブンガク者として日本が滅びるその日を見届けよう、とアンゴ先生、腹をくくっている。だから、戦争がどうなっていようが、アンゴ先生は全く動じない。自称歴史タンテイ殿の想いだけが空回りして、ひとりで悪い汗をかいている。
その上、この自称歴史タンテイ殿、死んだはずのアンゴ先生を連れだして靖国神社を参拝させるという暴挙にまで出ている。いちおう「偽作」とつけているが、お弟子殿、まだまだアンゴ先生の域には達していないようだ。
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