『文庫 人間の性はなぜ奇妙に進化したのか』(ジャレド・ダイアモンド著,長谷川寿一訳) 性のあり方は人間の社会のあり方を決定づける。
『銃・病原菌・鉄』では人類の文明史を俯瞰したジャレド・ダイアモンドはそもそもは進化生物学者。そういう意味で、この本のテーマの方が本分なのかもしれない。原題は『セックスはなぜ楽しいか』。苑タイトルのままだと女性や学生がこの本を手に取りづらいだろう、ということで文庫化にあたりタイトルを変えたそうだが、そもそもセックスのハウトゥ本ではない。ヒトはなぜ隠れてセックスをし、セックスそのものを楽しむのか。生物の進化の中で、人間の性はなぜ奇妙に進化したのか。そしてそれがどのように人間社会のあり方を決定づけてきたのか、を主題としている。
目次を見ても「なぜ男は授乳しないのか?」とか「男はなんの役に立つのか?」といった当たり前(?)のようなことについても「何故?」と問いかけている。ただ、生殖を全く目的としないセックス=同性愛については全く記述がないのがむしろ、何故?と思ってしまった。同性愛についてはわざと触れていないような気がしてならない。狭く深く掘り下げてはいるけれども、まだまだ発掘すべきフィールドは残されているのではないか、という印象もある。
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