『もう「東大話法」にはだまされない 「立場主義」エリートの欺瞞を見抜く』(安冨歩著)「承知しました」で「東大話法」がなくせる?
『原発危機と「東大話法」―傍観者の論理・欺瞞の言語―』『幻影からの脱出―原発危機と東大話法を越えて― 』に続く、安冨さんの「東大話法」シリーズ?第3弾。この本では、いかにして「東大話法」を使ってくるひとに、自分が言っていることがいかに矛盾に満ちているか、を気づかせる手法について書かれている。その武器が、テレビドラマ『家政婦のミタ』で家政婦のミタさんが使っていた「承知しました」だと言う。
「どんなに醜悪な現実でも、どんなにウソに固められた言い訳でも、『承知しました』という言葉で、その歪みを体現してやれば、その人も『東大話法』から脱却することができるでしょう。」
私は「東大話法」に抗する最大の手段は「無視」だと思っていたのだけれど、それでは「東大話法」をなくすことはできない。それどころか、「東大話法」はどんどん増殖していく。そうではなく、「東大話法」のウソにとことんつきあってあげて「東大話法」を使うひとが自分が言っていることはオカシイな、と気づかせてあげる。そうすれば自分の「東大話法」を恥じて転向するであろう、ということなのだろう。
それでも、やっぱり、そんなアホにつきあってあげられるほどヒマじゃないよな、と思えてしまう。そして、そもそも「東大話法」を使っているひとたちが自分の言動を恥じ入ることもないんじゃないか、とも思えてしまう。むしろ、「立場」にすがりつくひとたちはその立場にさらに頑なにすがりつき、ついにはトンデモナイ暴走をしてしまうのではないか、と逆に心配してしまう。
そんなヒマではない私たちができるのは、「東大話法」に対する「包囲網」を作ることではないだろうか。「東大話法」の特徴としくみを理解し、「東大話法」を操るひとを見分ける能力、「東大話法」に騙されない能力を身につけることだ。そして、「東大話法」を使いひとたちに、”憐れみを込めて”そっと微笑んであげることだと私は思う。そうして、あなたの立場はわかるけれど、その立場にしがみついて発言していて可愛そう、だと思っていることを表明してあげることではないだろうか。
「あなたの立場はわかるけれど」という理解を示してあげない限り、「承知しました」という態度では通用しないような気がする。「承知しました」といって追い詰めるのではなく、「東大話法」から脱する逃げ道を作ってあげた方が、「東大話法」をなくしていけるのではないかと思う。
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