【安吾を読む】『夜長姫と耳男』坂口安吾は、夜長姫のような敵わない存在に生涯をかけて抗おうとした作家かもしれない。
長者の娘である夜長姫のためにミロクを彫ることになったヒダのタクミの耳男。しかし、耳男は夜長姫に耳を削がれ、夜長姫を呪うためにバケモノを創り上げる。しかし、夜長姫は耳男の想像をはるかに超えていた。
「本当に怖ろしいのは、この笑顔だ。この笑顔こそは生きた魔物も怨霊も及びがたい真に怖ろしい唯一の物であろう。」
坂口安吾は、こういう敵わない存在に生涯をかけて抗おうとした作家かもしれない。
「好きなものは咒うか殺すか争うかしなければならないのよ。お前のミロクがダメなのもそのせいだし、お前のバケモノがすばらしいのもそのためなのよ。いつも天井に蛇を吊るして、いま私を殺したように立派な仕事をして・・・・・・」
坂口安吾の作品の中で、最も美しい物語の終わり。
« 【安吾を読む】『織田信長』「なぜなら、彼はすべき用意をすべてしつくしており、そしてイノチをかけていた。」 | トップページ | 『大事なものは見えにくい』(鷲田清一著) 大事なことは、理解することではなく、理解しようとすること。 »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 【安吾を読む】『木枯の酒倉から 聖なる酔つ払ひは神々の魔手に誘惑された話』「俺の行く道はいつも茨だ。茨だけれど愉快なんだ。」(2014.07.11)
- 『金融緩和の罠』(藻谷浩介・河野龍太郎・小野善康著、萱野稔人編)金融緩和より雇用を増やすことこそがデフレ脱却の道。(2014.07.10)
- 『ひとを“嫌う”ということ』(中島義道著)ひとを「嫌う」ということを自分の人生を豊かにする素材として活用すべき。(2014.07.09)
- 【安吾を読む】『街はふるさと』「ウガイをしたり、手を洗ったりして、忘れられないようなことは、私たちの生活にはないのです。」(2014.07.08)
- 『天災と日本人 寺田寅彦随筆選』(寺田寅彦著,山折哲雄編)地震や津波といった天災からこの国を守ることこそが「国防」である。(2014.07.04)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント