『美貌の文化史 - 神と偶像』(矢田部英正著)モノノフが失笑する(かもしれない)アイドル論。
アイドル、といえば、一昔前の印象は、歌は歌手と言えるほど上手くもなく、踊りもダンサーと言えるほどプロっぽくもなく、でも美貌と独特の存在感を醸し出している芸能人、というところだろうか。欧米の基準だと歌も下手、ダンスも下手な者はCDも出せないどころか、レビューすらできないだろう。でも、日本ではそういうひとたちがアイドルとしてもてはやされる不思議。その不思議に迫る本かと期待して読んだのだが、そういう話ではなかったようだ。
この本は、記紀神話から脈々と流れる日本のアイドルの系図について語っている。アマテラスを岩戸の外に引きづり出すために踊ったアメノウズメに始まり、仏教の稚児文化、能楽、歌舞伎、浮世絵の美人図、そして松井須磨子や原節子、山口百恵といった近代日本を飾ったアイドルたち、そして現代のAKB48などのアイドルにまで言及していく。
そして、著者はももクロの快進撃に、
「もしかしたら、私たち日本人は、戦後教育によって抑えこまれてきた日本古来の神々が再生されることを、心の深層で待ち望んでいるのではないか」
と結んでいる。その言葉をモノノフたちに伝えたら、きっと失笑されるだろうなあ。
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