【安吾を読む】『風と光と二十の私と』「人間の尊さは自分を苦しめるところにある」
坂口安吾が坂口安吾たらんとした戦い前夜を描いた小説。自身の学生時代、そして代用教員時代を振り返るように描いている。もうひとりの安吾が安吾に語りかける。
「満足はいけないのか」
「ああ、いけない。苦しまなければならぬ。できるだけ自分を苦しめなければならぬ」
「なんのために?」
「それはただ苦しむこと自身がその解答を示すだろうさ。人間の尊さは自分を苦しめるところにあるのさ。満足は誰でも好むよ。けだものでもね」
代用教員を辞めた安吾は、すぐに小説家への道を志すのではなく、釈迦が歩んだような苦行に入る。
安吾が代用教員として勤めた小学校には、「人間の尊さは自分を苦しめるところにある」というこの小説の一節の石碑が立っている。小学生にはちょっとムズカシイ言葉だとは思いますが。
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