『道徳という名の少年』(桜庭一樹著) 桜庭作品に流れる鳥取県西部のあの空気、匂いは、懐かしくもある。
とある小さな国の絶世の美女から生まれた3姉妹とその弟は、1、2、3、そして、悠久と名付けられる。そのきょうだいたちは背徳を繰り返し、やがて滅びに向かっていく。退廃的な物語だが、血が引き継がれていく物語は著者が繰り返しテーマにしているもの。
「かんばせ」などという言葉は久しぶりに目にした。「かんばせ」というのは、顔つき、容貌のことだが、対面、面目という意味もある。普通は容貌とか容姿といった言葉を使うところだろうが、こういう言葉のセンスは桜庭作品だなあ、と思ったりもする。
この文庫本には、ボーナストラックとして、最初期から最新作までを網羅したインタヴュー集「桜庭一樹クロニクル2006‐2012」が収録されている。私はかって鳥取県西部に住んでいたことがあり、あのどんよりとした天気、かって神話の世界の名残ともいえる匂いは、実感できる。桜庭さんは鳥取県西部の出身らしい(ウィキペディアはアテにならない)が、桜庭作品に流れるあの空気、匂いは、懐かしくもある。
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