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2013年4月23日 (火)

『評価と贈与の経済学』(内田樹、岡田斗司夫FREEex著)これからは「人柄」こそが生きる力の時代になっていく。

岡田斗司夫FREEexさんは、FREEexという「社員が給料を払う」というユニークな会社の代表。「いつまでもデブと思うなよ」のひと。その岡田さんと内田樹センセーとの対談をまとめた本。

まず、岡田さんの「イワシ化」という話から対談が始まる。「イワシ化」とはイワシ単体では小さいけれど、イワシは群れをなして大きくみせかける、しかしただ群れているだけなので、いざ何かが起こるとあっさりとその群れが崩れてしまう。そういう話から始まって、「努力した分についてすぐ報酬をよこせ」「老人たちは不当に分け前を独り占めしている。分け前を自分たちによこせ」という論調に異議をとなえていく。「努力は必ず報われる。だからそれに見合った報酬、分け前があってしかるべき」という言い方は、実は「努力は必ず報われる」ということを信じていないから発せられる、という意見はなるほどなあ、と思った。「努力は必ず報われる」ということを信じていれば、「いますぐに報酬をよこせ」とは言わないはず。その日が来るまで地道に不平不満を言わずに努力をし続けるはずなのだから。努力というものを即座に決済したがるひとは、やはり「努力は必ず報われる」ということを信じていないのだ。

経済とは自分のところに回ってきたパスを別のひとにパスすること、そうやてモノやお金やサービスやなんやらかんらやをグルグルと回すことである。自分のところに回ってきたパスを「自分の努力の成果であり、自分が受け取ってしかるべきもの」と決め込んで別のひとにパスを回さなければ、経済は回らなくなる。しかし、パスとは「贈与」である。「自分が受け取ってしかるべきもの」と思っているものは自分だけの努力で成し遂げられたものではない。そうであれば、自分のところに回ってきたパスは他の誰かにパスを回すべきなのだろう。

この本の中で、2人は「拡張家族」ということに意見の一致を観ている。血縁で繋がった家族ではなく、他人の面倒を快く引き受けるひとたちによるコミュニティという捉え方を私はしたのだが、「銭のない奴は俺んところに来い!」と言えるひとが中心になって作る相互扶助関係が「拡張家族」と言えるのではないだろうか。そういうことはお金や財産があって生活に余裕がある人しかできないのか、と言われればそうではなく、「俺も(銭が)ないけど心配するな」と言えるようなひとでも、心構えさえあればできるかもしれない。

ネットカフェで4人が一畳ほどのスペースに寝泊まりするのではれば、4人でアパートの部屋を一部屋借りて住んだ方がずっと良い。住むところが定まれば、そこから仕事を見つけ、生活を再建できるかもしれない。でも、お互いにお互いの面倒を抱え込みたくないから、そういう発想ができない。

資本主義が発達しすぎた社会は、「お金さえ持っていればなんとか生き延びられる」社会だと言えるかもしれない。しかし、3.11以降、私たちは「お金さえ持っていればなんとか生き延びられる」社会が崩れていっていることを薄々気づいている。「絆」という言葉がもてはやされたのもその表れなのかもしれない。しかし、誰でも良いから繋がっていれば良い、というわけにもいかない。そういう姿はまさに「イワシ化」なのだろう。何か起こればあっさりと崩れてしまう集団は、個人が生き延びられる社会とは言えない。

岡田さんの言う「評価」経済とは、そのひとの技能や人脈、人柄に寄って立つ経済のことで、むしろそのひとの「信用」に立脚した経済と言えるだろう。これからは「人柄」こそが評価される時代になっていく。「人柄」の良いひとにパスが回ってくる。そういうひとを中心に「拡張家族」と言われるようなコミュニティができあがり、お互いに助け合い、生き延びることができる社会が形成されていくのかもしれない。

例え偽善であっても最後まで偽善を貫き通せば善である。「銭のない奴は俺んところに来い!俺もないけど心配するな」と、どーんと言えるようなひとになりたいものだ。



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