『伏 贋作・里見八犬伝』(桜庭一樹著) 善玉であった八犬士が伏と名を変え悪玉に。ものごとを逆転させることで見えてくるものもある。
『南総里見八犬伝』は、江戸時代後期に滝沢馬琴によって著された大河小説。仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の文字のある数珠の玉(仁義八行の玉)を持ち、牡丹の形の痣を身体のどこかに持っている八犬士の勧善懲悪の物語。それをベースにしながら、善玉と悪玉を逆にして創られたのがこの物語。ゆえに、「贋作」と謳っている。
「伏」という字は「人」+「犬」。この物語では、人であって人でなく、犬の血が流れる異形の者という設定だ。そして彼らは時に凶悪事件を起こし、それゆえに幕府はその首に懸賞金をかけ、江戸の町には賞金稼ぎたち溢れ、がその首を狙っている。
14歳の女の子の浜路は祖父の死に伴い、兄のいる江戸へやってきた。猟師の浜路は伏は獲物である、という単純な論理によって伏を狩る。しかし、人の形をした伏は、ただの獲物ではなかった。伏はひとの言葉を使い、浜路に語りかける。それでも、浜路の伏を狩る旅は続く。その旅に終わりはない。
そういえば、この作品はアニメ映画にもなったのでした。劇場公開時に観損ねたのですが、意外と評判が良い。DVDで観てみようかな。
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