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2013年1月31日 (木)

『原発危機と「東大話法」―傍観者の論理・欺瞞の言語―』(安冨歩著)「我が国が」とは「誤解を恐れずに言うならば」などという言い回しは、嘘を誤魔化すための常套句です。

福島第一原子力発電所の事故から見えてきたもの。政府や東京電力や科学者たちの対応に著者の安冨歩さんは衝撃を受けます。そこにはあまりにも欺瞞的な言葉が溢れていたからです。

安冨さんは、まず、「名を正す」ということから語り始めます。原始力という分野は、すべてを言い換えることで成り立っています。「危険」を「安全」に、「不安」を「安心」に、「隠蔽」を「保安」に、「事故」を「事象」に、「長期的には悪影響がある」を「ただちに悪影響はない」に、「無責任」を「責任」に、彼らは言い換えます。
私たちは原子炉建屋が吹き飛ぶ映像を観ましたが、当時の官房長官だったエダノさんはそれを「爆発的事象」と呼びました。それは明らかに「爆発事故」であったのにも関わらず、です。
放射能は人体に取り込まれれば悪影響があることは明らかなのに、「ただちに悪影響はない」という言い方を私たちは何度も何度も耳にしました。自然界に自然に存在する放射能以上のものをばらまかれたことを私たちは許容する必要など何もないのですが、そういう言い方を、権威のあると思われる学者や政治家たちが口にするたび、無力感に囚われ、諦めとともに許容してしまっていたのではないでしょうか。

なぜ、原子力に関わるひとたちが、そのような欺瞞に満ちた言葉を使うのか、安富さんは、「立場」という日本特有の概念によるものだと言います。

「私は、この戦争を経て、日本社会は、人間ではなく、『立場』で構成されるようになった、と考えています。そうなると人間は、それ自身として尊重されることではなく、『立場』に立って、『義務』を果たすことによってのみ、尊重されるようになります。」

「この戦争」とは太平洋戦争のことです。戦争では自分の生の感情や思考を押し殺して、無私の貢献を強要されました。それが現代まで残って、自分の生の感情や思考を表に出さず、「立場」を明確にしてその「立場」に寄った言動こそが尊重されています。そして、「立場」こそが隠れ蓑となって、嘘の温床となっています。そこには人間がいないのだから、嘘がはびこるのかもしれません。

この本には安富さんが「東大話法」と名付けた、欺瞞に満ちた語り方の法則がいろいろと紹介されています。こういう語り方に、騙されないようにしたいものです。特に、「我が国が」とは「誤解を恐れずに言うならば」などという言い回しは、嘘を誤魔化すための常套句です。警戒しましょう。



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