『監督・選手が変わってもなぜ強い? 北海道日本ハムファイターズのチーム戦略』(藤井純一著)スポーツをビジネスとして成り立たせれば、チームは強くなる。
2012年のパ・リーグを制したのは北海道日本ハムファイターズだった。エースのダルビッシュ選手が抜け、監督には解説者としては実績があるが監督としてはまったくの新人の栗山英樹さんが就任した。誰もが戦力が低下し、采配も未知数ということからファイターズを優勝するとは予想していなかった。それだけにファイターズの強さ、そして何故ファイターズは強いのか、という疑問や興味をもったに違いない。
そういう意味で、この本にその答えがあるのでは、という期待があった。著者の藤井純一さんは、親会社の日本ハムからJリーグのセレッソ大阪の経営に携わり、スポーツビジネスを学んだ。その後、北海道日本ハムファイターズの経営者となった。スポーツをビジネスとして成功させる。それがチームを強くするカギだと言う。
プロ野球は長い間、親会社の「広告塔」だった時代があった(それは一部、今も続いている)。プロ野球チームを持つことは一種のステータスであり、それにより親会社の知名度を上げる。お客さんがお金を払って球場に足を運ばなくてもタダ券をばらまけば良く、儲けなど度外視、損失は親会社が補てんする。チームの経営はお客様ではなく本社の方を向いている。それであれば、チームはよっぽど弱くなければ親会社のイメージ低下のダメージはない。お客さんにお金を払って試合を観に来てもらおう、チームを強くしよう、という、普通の企業に例えるなら自分たちの製品を買ってもらおう、もっと良い製品を作ろう、という普通の努力がなされなかった、ということだろう。
北海道日本ハムファイターズは、お客様にお金を払って試合を観に来てもらおう、チーム経営をビジネスとして成り立たせ、そこで生まれた収益をチームに再投資してチームを強くしよう、と地道に努力している。
北海道日本ハムファイターズは、どこかの金満チームと違って、大型補強をしない。ファイターズは他のチームからスター選手を引っ張ってくればお客さんが試合を観に来てくれる、チームが強くなる、とは考えていない。スター選手に依存すればその選手が故障したり活躍できなかったらお客さんも試合を観に来てくれなくなるし、試合にも勝てない。野球はフィールドの9人の選手だけでなく、控えの選手、監督やコーチ、スタッフ、そしてファンによって成り立つものだ。スター選手が1人や2人いたって総合力が上がらなければ、勝ち続けることはできない。
北海道日本ハムファイターズは、他のチームからスター選手を引っ張ってくることよりも、選手の育成に力を入れている。なので、ドラフトでも一番欲しい選手を指名する。例えそれが某チームしか入団しないとか、メジャーリーグに挑戦したい、と言っている選手であっても、その選手がファイターズに必要な選手だと思うのなら、躊躇わずにその選手を指名する。そして、選手の育成に力を入れて強いチームを作るというチームとしての信念が、これから入ってくる選手をその気にさせ、成長を促す。大谷選手にはファイターズで成長して日本一の、いや世界で活躍する選手になってほしい。
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