『製鉄天使』(桜庭一樹著) 少女たちのフィクションは深い奈落に向けてチキンレースをしているようなものかもしれない。
登場人物の名前を変えているものの、これは「赤朽葉家の伝説」のスピンオフ作品という位置づけなのだろう。「赤朽葉家の伝説」は山陰を舞台とした家族3代の物語。「赤朽葉家の伝説」の赤朽葉毛毬が「製鉄天使」の赤緑豆小豆となって山陰の田舎道もといハイウエーを駆け抜ける。レディース「製鉄天使」の初代総長となった小豆は、やがて鳥取、島根、岡山を制覇し、そして「中国地方の大都会」山口に乗り込んでいく。
少女たちのフィクション。それはティーンエイジ限定のものだ。ティーンエイジが終われば、卒業。いちはやくそこから卒業して大人になった小豆の親友が堕ちていったように、その先には永遠の国があるのか、それとも深い奈落が待ち受けているのか。少女たちのフィクションは深い奈落に向けてチキンレースをしているようなものかもしれない。
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