『橋本治という立ち止まり方 on the street where you live』(橋本治著)ひとも国もすっ転ぶ。すっ転んだ時の行き方を問う本。
『橋本治という行き方』、『橋本治という考え方』に続く三冊目の橋本治による時評。2009年の政権交代から2011年の東日本大震災までの日本と橋本治の生活が見事なまでにシンクロしているかのように思えてしまう。これまでの橋本治の時評というのは、世の中というものと橋本治の生活というものがシンクロするようなことはなかった。どちらかというと、それってそーゆーことなんじゃないの、という橋本治の突きっ放しこそ、橋本治の時評の醍醐味であったような気がする。
その印象は、やっぱり橋本治がかかってしまったという顕微鏡的多発血管炎という難病のせいなのだろうか。そして、それが日本が立ち止まった2011年の1年前の出来事だったからだろうか。2011年、東日本大震災と福島原子力発電所の事故により、日本は立ち止まった、というより、思いっきりすっ転んだ。もう一度起き上がることができるだろうか、と不安になるくらいに、思いっきりすっ転んだ。それからの日本人は3つの方向に進んでいる。
・今までの行き方が間違っていたとは認められず、すっ転んじゃったこと自体をなかったことにしたいひとたち。
・すっ転んじゃったのは今までの行き方が間違っていたんじゃないか、と思い始め、声を上げ始めたひとたち。
・すっ転んじゃったんだったら、それを受け容れて行き方を変えるしかないじゃん、と開き直っているひとたち。
人間だって、国家だって、すっ転ばずに行き続けることはできない。いつかはすっ転ぶ。もちろん、すっ転ばないようにするのが一番だが、すっ転んだときにどういう行き方をするか、その覚悟なり、心構えをしておくことだ。
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