『昭和のエートス』(内田樹著) 「昭和人」の心意気が、今、私たちが何を考えるべきかを問いかける。
「昭和人」の心意気、「昭和人」の姿を通して、私たちが今、何を考えるべきかを問いかける本。
エートスという言葉は、「ある社会集団・民族を支配する倫理的な心的態度・性格・習性」という意味。そうすると、『昭和のエートス』とは、「昭和という時代に、日本・日本人を支配した倫理的な心的態度・性格・習性」ということになるのだろう。
この本は、内田樹センセーのブログ本ではなく、新聞や雑誌などのマス・メディアの求めに応じた書かれたものを集めたもの。まず、昭和二十年八月十五日という「断絶」を受け入れ、生き抜いてきた「昭和人」の規範というものが語られ、そういう「昭和人」の姿を通して、私たちが今、何を考えるべきか、を映し出しているように思える。
「一九五〇年代から六〇年代初めまでに日本社会に奇跡的に存在したあの暖かい、緩やかな気分」については内田センセーの盟友でもある平川さんも語られているが、その時代を生きたことがないひとたちに、それを伝えるのはとてつもない苦労だと思う。しかし、そういう苦労を背負う覚悟が、内田センセーや平川さんにはある、ということなのだろう。
そして、興味深いのは、『日本辺境論』につながる小文『日本属国論』が収録されていること。たまに、「日本」という国号は中国から見て日が昇る位置にある国という意味だからよろしくない、という意見を聞くが、だったら、そういうひとたちはこの国をどういう名前で呼びたいのか、と問い返したい。そういう歴史的背景をひっくるめて、この国を愛することが、本当の愛国なのではないだろうか。
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