『ソロモンの指環―動物行動学入門』(コンラート・ローレンツ著,日高敏隆訳) 動物行動学は私たちに「人間も動物なのだ」ということを気づかしてくれる。
「ソロモンの指環」とは、旧約聖書の中で、大天使ミカエルがソロモン王に授けた指環のことだそうです。ソロモンの指環をはめることによって、ソロモン王はあらゆる動植物の声を聞く力を得ることができた、と言い伝えられているそうです。
ノーベル賞受賞の生物学者である、動物行動学者のコンラート・ローレンツは、この本の中で、『自分のよく知っている動物となら、魔法の指環などなくても話ができる』と語っています。つまり、魔法の力を使わずとも、動物たちの飼育や観察を通して動物たちと語ることができる、と。
動物行動学は私たちに「人間も動物なのだ」ということを気づかしてくれる。よく、動物を擬人化したアニメや物語があるが、それは本末転倒で、動物は人間が持っている動物としての性質を持っているにすぎない。逆に言うと、動物の行動を観察すると、人間の根本的で単純な行動様式を観ることができる。もっとも、複雑な脳を持ってしまった人間はそんな単純に行動しないから、動物を観察してわかるような明確な生態をなかなか示さないというだけだ。
しかし、家の中に鳥が飛びまわり、動物と同じ目線で這うように散歩する様は、まさに学問に没頭しすぎた学者。この生物学者の生態にも興味が沸いてくる。もっとも、一緒には暮らしたくありませんが。
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