『オール・マイ・ラビング 東京バンドワゴン』(小路幸也著) 背負っていくものが増えていけば、それを支えてくれるものだって増えていく。
「東京バンドワゴン」シリーズの第5弾。東京、下町の老舗古書店「東京バンドワゴン」を営む堀田家は、今どきは珍しい四世代の大家族。店には色々な古本と、様々な些事諸問題が持ち込まれる。ページが増える百物語の和とじ本、店の前に置き去りにされた捨て猫ならぬ猫の本。そして、伝説のロックンローラー我南人にある変化が…。
この物語の語り手であるサチさんは、ある物語の最後にこう語ります。
「人が生きていけば、たくさんの人と関わります。その中で背負っていくものも増えていきます。(中略)でも、背負っていくものを、その身体でまっすぐにきちんと受け止めていれば、それを周りから支えてくれるものだって、たくさん増えていくんです。人生とはそういうものだと思いますよ。それだからこそ、楽しいんです。」
今どきは珍しい大家族の物語は、私たちが失いつつあるものを思い出させてくれる。
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