『ダウンタウン』(小路幸也著) 絶えず流れ続ける音楽、ちょっと苦いコーヒーの香り。こういう場所を青春に持っているひとは羨ましい。
「ダウンタウン」といって何を思い浮かべるだろうか? ちっとも面白くないくせに威張りくさっているお笑いコンビ? そうではなく、歌の『ダウンタウン』を思い浮かべるのが正解だろう。しかも、歌っているのはEPOでも土岐麻子でもなく、シュガー・ベイブの山下達郎。
狭くて小さな喫茶店「ぶろっく」。その喫茶店の店先には謎の数字が書かれている。その常連客になった高校生の少年が、その喫茶店で出会うひとたちによって大人と出会い、そして大人になっていく。
時代は1970年代後半。この物語のバックにあるのは、絶えず流れ続ける音楽、ちょっと苦いコーヒーの香り。こういう青春の帰れる場所があるのは羨ましい。そして、こういう場所は、帰ってこれるけど、帰らないのが、実はちょうど良い。
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