『69 sixty nine』(村上龍著) 経済番組の司会者さんよ、自分の笑い声が聞こるか?
村上龍の小説の中で最高に楽しい小説。私的には、村上龍の小説の中でも最高傑作の3本のうちに入る。
1969年、村上龍が高校生の頃の佐世保。映画もバリ封もフェスティバルもすべては愛しいメリージェーンのため。すべてがシンプルで、しかし現実は夢のようではなく、しかし、それだけにエネルギーだけは溢れ、そして楽しい小説だ。
しかし、妻夫木聡主演で映画化された後に読み返すと、主人公のケンをどうしてもツマブキ君を思い描いて読んでしまう。校長室でのウ○コの場面とかも、映画の映像を思い出してしまうし、困ったものである。そして、しばらくカレーが食べれなくなる。困ったものである。
「唯一の復しゅうの方法は、彼らより楽しく生きることだと思う。
楽しく生きるためにはエネルギーがいる。
戦いである。
わたしはその戦いを今も続けている。
退屈な連中に自分の笑い声を聞かせてやるための戦いは死ぬまで終わることがないだろう。」
(あとがきより。)
この言葉にこの作品の、いや、村上龍の小説のすべてが込められていると思う。
今や小説家というよりは経済番組のホストとして認知しているひとも多いだろう村上龍であるが、死ぬまで戦い続けることは村上龍をしてもかなり難儀なものであることが見て取れる。
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