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2012年5月18日 (金)

『人が死なない防災』(片田敏孝著) 「自分の命は自分で守る」という言葉はよく使われるが、私たちはその意味を十分に理解しているだろうか。

小中学生の生存率、99.8%。東日本大震災で大津波に襲われた岩手県釜石市で、子どもたちはなぜ命を守ることができたのか。

「防災」を考える上で最も優先すべきことは、「死なないこと」である。そして、災害が起きた時に「死なない」ために最も優先すべきことは、「自分の命は自分で守ること」である。「自分の命は自分で守る」という言葉はよく使われるが、私たちはその意味を十分に理解しているだろうか。

釜石市で何故、小中学生が驚異の生存率を達成することができたのか? それは、「津波が来たら、一刻でも早く、なりふり構わず、海から離れた高いところに逃げる」ということを、子どもたちが自律的に実践することができたからである。大きな地震が来たら、誰から指示されるのを待つのではなく、「自ら率先して」逃げる。誰かが率先して逃げだせば、大勢がそれに続いて逃げる。避難所が危険と感じたら、もっと海から遠くへ高い所に「自分で判断して」逃げる。

「自分の命は自分で守る」と私たちはしばしば口にするけれど、実際には「誰かに指示されるまで逃げない」、「行政が作成したハザードマップでは自分の家は危険地域を外れているから津波は来ないだろう」と思って逃げない、「世界一とも言われる巨大な堤防があるのだからまさかこの堤防を超えて津波が押し寄せるとことはないだろう」と思って逃げない。「誰かが逃げろ」と言ってくれるはずだ、「逃げろ」と指示を出すのが行政の責任だ、「自分の命は誰かが守ってくれる」「自分の命を守るのが行政の責任だ」という態度では、結局逃げ遅れることにつながる。

著者が釜石市等で防災教育の主なターゲットにしているのは小中学生である。子どもたちが「自分の命は自分で守る」ということを率先して実践できれば、親たちは子どもたちを心配して逃げ遅れることがなくなるし、子どもたちにつられてお年寄りたちも逃げるようになる。年齢に関係なく、ひとりひとりが「自分の命は自分で守る」ことを実践できれば、生き残る可能性が高まる。行政の指示を当てにしていては生き残れないのである。

東日本大震災では、しばしば「想定外」という言葉が使われた。それでは、どの程度を「想定」すれば良いのか。津波が来る。それでは、10メートルの堤防を築けば良いのか、それとも15メートル?20メートル?島国である日本の海岸線にそのような堤防を築くことは、財政的に無理である。
著者は「100年防災」と言う。過去100年間で起こった災害に対応できる防災を「想定」する。そして、その「想定」を超えた場合にどうすれば良いかを「想定」する。例えば、過去100年で発生した津波の最大が10メートルであれば、15メートルの堤防を作る。しかし、もしかすると15メートルを超える津波が来るかもしれない。その時は、とにかく一刻でも早く海から遠くへ高いところへ逃げるしかない。どうやって逃げるか、を「想定」することが重要なのだ。「過去100年でこの堤防を超える津波は来なかった。だから安心」と思ってしまうと、「想定」を超えた津波が来たときに逃げない、逃げ遅れてしまう。

「想定内」だとか「想定外」だという議論は水掛け論になるだけで、キリがなく、不毛である。そんな議論をするよりは、「想定」を超えたときにどうやって「自分の命を自分で守れるか」を考えることの方が重要である。



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