『文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎』(ジャレド・ダイアモンド著) 世界史=西洋史ではない、ということを改めて認識させられる本。
なぜ人類は五つの大陸で異なる発展をとげたのか。アメリカ大陸の先住民はなぜ、旧大陸の住民に征服されたのか。なぜ、その逆は起こらなかったのか。1万3000年にわたる人類史の謎を紐解こうとする本。
学校で習う世界史とは、すなわち西洋人の歴史である。西洋と西洋人を中心とした歴史であり、それは、人類の主役は西洋人だと「錯覚」させる。1万3000年前にアフリカ大陸で誕生した人類は、ユーラシア大陸を横断し、アメリカ大陸やオーストラリア大陸へ移っていった。その土地土地では豊富な野生動物がいたかもしれないし、家畜としやすい動物がいたかもしれない。穀物の栽培に適した土地だったかもしれないし、穀物の栽培には適さない土地だったかも知れない。すべては環境、そしてその環境に人間がどう対応したか、によって決まる。
西洋人は、アメリカ大陸の先住民たちを駆逐し、征服した。この点をもって、西洋人が他の大陸に住んでいた人間たちよりも優れていると思い込みがちだ。特に、日本人は西洋コンプレックス、西洋人に対するコンプレックスが強い。西洋人の方が自分たちより優れていると思いこんでいる。しかし、果たしてそうか。西洋人だから優れている、と何をもって言うことができるのか、この本を読んで、そういう思い込みを捨て去るべきではないか、と思わずにはいられない。
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