『政府は必ず嘘をつく アメリカの「失われた10年」が私たちに警告すること』(堤未果著) ニュースを見て何か違和感を感じたら、その違和感を放置しないようにしよう。
アメリカの「失われた10年」とは、9.11後の10年間のことを指す。9.11の同時多発テロ以降、大惨事につけ込んで過激な市場原理主義「ショック・ドクトリン」が実施され、大企業に有利な偏った報道がなされてきた。マスコミは公平・中立と思うのは間違いで、情報は政府によって規制され、大企業に利益を誘導するように操作され、自由市場という名の下に国民が虐げられてきたアメリカの姿に、このままでは日本が二の舞になってしまう、と危機感が著者にこの本を書かせたようだ。
自由市場という言葉。「自由」という言葉の良いイメージから、自由市場という言葉も良いイメージを持たれがちだが、そこで考えなくてはならないのは、「誰のための自由か」ということだ。誰もがフェアに競える市場であれば自由市場も良いだろう。しかし、それが大企業が自由に操れる市場だとしたらどうだろうか。
私たちは国連や国際機関に対して、信頼できるもの、という思い込みがある。しかし、IAEA(International Atomic Energy Agency)は原子力の平和利用を促進する機関であり、IMF(International Monetary Fund)が融資対象国に課せる構造調整プログラムはその国を大企業の食い物にし、その国の主権と国力を奪ったという見方もできる。国そのものを買い取れば、やりたい放題。自分たちが参入したり利益を上げるらめに不利な規制は全部撤回させることができる。そう考えると、国ではなく、大企業が国を侵略しているかのようだ。今、話題になっているTPPにしても、それで「誰が利益を得るのか」を十分に検討して判断すべきだろう。
3.11の大震災以降、原子力発電所の事故や放射能に関する情報は、政府や東京電力によって隠ぺいされ続けてきた。そしてしばらくして「実は・・・」と出てくる政府や東京電力の発表に、私たちは「またか・・・」といって呆れることが日常化してしまっている。そういう諦めや無関心こそが、政府や大企業が情報隠ぺいや情報操作をしやすい土壌を作っている。そういう土壌ができてしまえば、政府や大企業が情報隠ぺいや情報操作はさらに加速してしまう。
そうならないためには、「ひとつの情報を鵜呑みにせず、多角的に集めて比較し、過去を紐解き、自分自身で結論を出す」ことである。ニュースを見て、何か違和感を感じたら、その違和感を感じた自分の感性を信じ、その違和感を放置しないことだ。そういうときは、別の角度から見てみる、それで誰が利益を上げるのかという視点で見てみる、過去に同じようなことがなかったか調べてみる。情報が溢れている今だからこそ、情報を「見抜く」ことが私たちに求められている。
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