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2012年2月19日 (日)

『呪いの時代』(内田樹著)  この世は「呪い」の言葉に満ちている。ネットでも、永田町でも、大阪市庁舎でも、いたるところで「生霊」となって跋扈している。

この世は「呪い」の言葉に満ちている。「自分は正しい。」という言葉、そして「お前は間違っている。」「お前は何もわかっていない。」という言葉は、「呪い」の言葉である。自分の意見だけを撒き散らし、他人の意見には全く耳を貸さない。それはネットの世界でも、永田町でも、大阪市庁舎でも、どこでも散見される風景である。そこには対話の余地はない。そういう「呪い」の言葉は、対話すべき他者の心を壊す。平安時代でもあるまいし、とも思うが、そういう「呪い」の言葉は「生霊」となって日本中を跋扈している。

1/23のNHK総合テレビ『プロフェッショナル仕事の流儀』で、グーグルの開発リーダー・及川卓也さんが紹介されていた。及川さんは卓越したシステム開発者でその業界ではカリスマ的な存在だ。おそらく彼が「自分が正しいと思っていること」をチームメンバーを命令すれば、彼の思いのままにプロジェクトを進めることができるだろう。しかし、彼はそれをしない。彼はチームリーダーの意見を聞く。チームリーダーは彼の意見に納得していなかったり、懸念を持っていたり、異論を唱えたりもする。しかし、それでも彼はチームリーダーに対して、「自分が正しいと思っていること」を押し付けよよとしない。チームリーダーが抱いている不安や懸念をひとつひとつ取り除き、その上で「自分が正しいと思っていること」を説く。
そうすることによってチームリーダーが、「自分が正しいと思っていること」を納得した上でプロジェクトに取り組むようになる。プロジェクトの成否は自分たちの肩にかかっていると、プロジェクトメンバの誰もが思うようになる。自分たちの責任でプロジェクトを成し遂げようとする。そして、そういうプロジェクトは得てして成功する。何か新しいものを創造することができる。そしてもしかすると世の中を変えることができる。
こういう姿勢を「情理を尽くす」と呼ぶのだろう。相手の気持ちや立場、考えを尊重しながらも、自分の気持ちや立場、考えを通す。それによって筋道をつけていく。

今やこういう「情理を尽くす」というやり方は否定されているかのようにも思える。「自分は正しい。」という弾丸を他者に向かって撃ち続けるようなやり方が正しいとされている。そして「自分は正しい。」と言うひとは、自分は万能であり、そういう自分を自分で尊んでいる。
一方で、自分は有限だと知っているひともいる。自分のできることは限られている、できないこともわきまえている。だから、自分ができることをどのように使うかを「自分は正しい。」と言い張るひと以上に考えているし、「自分は正しい。」という弾丸を他者に撃ち込んだりしない。なぜなら、自分のできないことを補うために他者が必要だからだ。そして、そういうひとは他者ができないことを自分が補うために必要とされることもあるということもわきまえている。そして、そういう社会の方がずっと生きやすい社会に違いない。



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