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2012年2月 4日 (土)

『虐殺器官』(伊藤計劃著) 9.11後の近未来をこれほど見事に描いた小説を私は寡聞にして他に知らない。

文庫版は黒一色の表紙に明朝体のタイトル名と著者名。著者名のケイカクのケイの字も旧字体だし、いかにもエヴァ世代の作家の作品といった装丁。この作品は、9.11後の近未来小説である。

9.11後のテロとの戦い。先進国は徹底的な管理社会に移行し、テロを一掃したかのように見えた。その一方で、後進国では内戦や大量虐殺が頻発し、それを驚異とみるアメリカはそこに暗殺者を送り込み要人を暗殺する。主人公のクラヴィスはその暗殺部隊の隊員である。そして、任務遂行に行った国々でクラヴィスは、謎の人物、ジョン・ポールと遭遇する。最初はただの影だったジョン・ポールは、徐々にクラヴィスの前にその姿を現していく。そして、クラヴィスは、人々が何故、虐殺を行っていくのか、その謎に迫っていく。
(この物語の鍵を握る人物がジョン・ポールというジョン・レノンとポール・マッカートニーというビートルズメンバ2人の名前のミックスで、なおかついかにもありがちな名前を2つ並べているのがなんとも妙である。)

ブレーメンの笛吹きなのか、セイレーンの歌声なのか、しかし、ひとびとを虐殺に向かわせる文法は確実に存在する。人口ピラミッドが若年層が以上に膨らんでいる(これをユース・バルジというそうだ)とき、その層の不満に火をつけるような文法が使えば、彼らはいとも簡単に虐殺に向かう恐れがある。あながち非現実なことではないのだ。この作品では、ブレーメンの笛の音がどういうものなのか、セイレーンの歌声がどういうものなのか、具体的には語っていないが、それは、村上龍の『コインロッカーベイビーズ』のヴァチュラにも匹敵するような兵器である。そして、それは兵器であると同時に、コミュニケーションの手段であり、そういう意味で「器官」とも言うことができるだろう。

こういう作品をエヴァ世代の著者が生み出したのは驚きだが、著者は2009年に34歳の若さで癌のためお亡くなりになった。残念である。


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