『これからの「正義」の話をしよう』(マイケル・サンデル著) 究極の選択をしなければならない、という状況は既に手遅れ。最善の選択とは、そういう事態を招かないようにすること。
ビジネス書の「アメリカの有名大学教授特別講義」もののブームの火付け役となった本が早くも文庫化。2012年春に刊行予定の新作の「さわり」の部分付き。次回作は「何でもかんでも売っている市場経済」に対する正義とは、という内容のようだ。
サンデル先生は、私たちに究極の選択をつきつける。それは「自分が殺されるとしたらどっちの殺され方が良いか」「もしどちらかを見殺しにしなければならないとしたらどっちを見殺しにするか」といった類の選択だ。
しかし、それらの選択の前には、「どうしてそういう状況になるのを防げなかったのか」という問いかけがスッポリと抜け落ちている。私たちは殺されるのも、殺すのも、どちらも嫌だ。そういう嫌な状況を作りださないことにもっと思考を集中した方がずっと良い。
究極の選択をしなければならない、という状況は既に手遅れで、私たちはまず、手遅れにならないように努めるなければならない。サンデル先生の本から学ぶべきは、まず、そういうことではないだろうか。
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