『期間限定の思想 「おじさん」的思考2』 (内田樹著) 邪悪なものは意味もなく存在する。まったく、この世は不条理である。やれやれ。
オジサン的思考の続編?なのかな。第一章「街場の現代思想」は女子大生の恋愛などに関する素朴な仮想質問に内田センセーが答えるというもの。その中で面白かったのは、「先生、村上春樹の小説のテーマって、何でしょう?」というなんともストレートな質問に対して、内田センセーはこう答える。
「『邪悪なものが存在する』ということだよ」。
この世の中には、邪悪なものが私たちのふるまいに関係なく、存在する。何故、邪悪なものが存在するのか、と問いかけてもその答えは帰ってこない。邪悪なものは意味もなく存在するし、その存在の意味を問うても答えなどない。私たちはものごとに意味を求める。意味があるとわかったとき、私たちはすっきりするからだ。しかし、邪悪なものは意味もなく存在する。まったく、この世は不条理である。やれやれ。
邪悪なものは、私たちの目の前にかなり高い確率で現れる。それに意味を求めてもそれこそ意味がないし、嘆き悲しんでいてもどうしようもない。 邪悪なものは、私たちの目の前にかなり高い確率で現れる、ということをそういうものだとし、そのときのために準備(心構え)をしておくこと。それしかない。そいうひとだけが、「気分の良いバーで飲む冷たいビールの美味しさ」にありつける。なるほどなあ、と思う。
私はある時期に村上春樹の作品を読むのを止めてしまったのだけれど、また機会があったら、彼の初期の作品を読み返してみようかと思う。
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