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2011年12月14日 (水)

『オリンピックの身代金(上)』 (奥田英朗著) 「東京だけが祝福を独り占めしている。」その構造は1964年当時も今も変わらない

昭和39年夏、東京はアジア初のオリンピック開催を目前に控えて熱狂に包まれていた。そんな中、警察幹部宅と警察学校を狙った連続爆破事件が発生。前後して、五輪開催を妨害するとの脅迫状が届く。敗戦国から一等国に駆け上がろうとする日本。オリンピックの成功は一等国の仲間入りをする証だ。

この頃の物語が語られるとき、それは「懐かしさ」とともに語られることが多い。「あの頃は良かった」と。しかし、私はそういう物語には懐疑的だ。確かに、あの頃の日本は人類が経験したことがない経済成長を短い期間で、急速に達成した。ひとびとの生活は急激に変化し、その変化は輝かしい未来を約束しているかのようだったに違いない。そして、その約束の証しが、東京オリンピックだった。しかし、光あるところには闇がある。光が眩しければ眩しいほど、闇は深く暗い。

この物語で、オリンピックを妨害しようと企てる若者は、東北の貧しい農村の出身で、東大生である。しかし、彼は徒党を組んで学生運動をしているわけではない。年の離れた兄が東京オリンピックの工事現場で死んだ。その兄が見てきたものを見ようとして彼は土方作業に出る。そこでの労働は過酷なものだった。そして、その苛酷さがオリンピックを支えていた。光の影には必ず闇がある。

「東京だけが祝福を独り占めしている。」

この国の繁栄は、そのように進められてきた。その祝福は、忘れられていた名もなき犠牲者たちの上に成り立っている。


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