『内部被曝の真実』 (児玉龍彦著) 人が汚染したものは人が除染しなければならない。それは次の世代への政治家と科学者の義務である
「7万人が自宅を離れてさまよっているときに、国会は一体、何をやっているのですか!」
2011年7月27日 (水) 衆議院厚生労働委員会で、著者は、政府に「満身の怒り」を表明した。
この本には、その時の発言、全文が収録されている。それだけでも、この本は読む価値がある。福島原子力発電所の事故によって、広島に投下された原子力爆弾20個分以上の放射性物質が放出された。それによる健康被害が現れるのは時間がかかる。それが証明されるまで待つことは被害を広めることになる。今すぐに、除染せよ、というのが著者の主な主張だろう。子どもたちを守る。それは国がすべき第一のことだ。それを疎かにして政治家たちは一体何をやっていたのか。
専門家に想定外という言葉は許されない。
人が汚染したものは人が除染しなければならない。それは次の世代への政治家と科学者の義務である。
著者の言葉には逃げ道はない。政治家たちや科学者たちや有識者たちが懺悔と反省と言い逃れに終始していたとき、著者はこの問題にまっこうから立ち向かう決意をもって国会で発言した。それはどんな政治家の言葉よりも、マスコミの報道よりも、力強く私たちの心に響いた。そして、除染こそが今私たちがすべきことだということを私たちの意識に刻みこんだ。
どじょうはどじょうらしく、土壌を救うべきだ。今すぐに。
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