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2011年10月12日 (水)

『耳をふさいで夜を走る』(石持浅海著) この物語の中に、「アルラウネ」という言葉が出てくる。この「アルラウネ」こそ、石持作品のキーワードと言ってよいだろう

並木直俊という青年が、3人の女性を殺すと決意したことから物語は始まる。何故、彼が3人の女性を殺そうと決意したか、冒頭ではよくわからない。とにかく、彼は3人の女性を殺すと決意して、さてあとで自分に嫌疑がかからないように用意周到に計画をたてようとしたとき、突然の来訪者に襲われ、殺されそうになり、逆に心ならずも来訪者を殺してしまう。その突然の事態に、彼は今夜中に3人の女性を殺そうと決意する。

何故、彼が3人の女性を殺そうと決意したか。彼は、彼女たちが「覚醒」する前に殺さなければならない、と言うが、その「覚醒」ということが何なのか、これもまたよくわからない。とにかく、彼は今夜中に3人(すでに1人殺しているから4人)の女性を殺そうとする。

この物語の中に、「アルラウネ」という言葉が出てくる。この「アルラウネ」こそ、石持作品のキーワードと言ってよいだろう。石持作品は、「場を支配する若い女性」がしばしば登場する。彼女は近親者が殺されても動じずに極めて冷静で場を自分に有利に導こうとする。石持作品に登場する彼女たちはまさに「アルラウネ」だ。この物語でも、「アルラウネ」がその一言で場の支配を逆転させるという展開が観られる。

アルラウネは、掘り取ろうとするともの凄い声をあげるので、掘ろうとした人はたちまち死んでしまう。だからアルラウネは、「耳をふさいで」掘り取らなくてはならない。しかし、「耳をふさいで」夜を走った男こそ、「覚醒」してしまったのかもしれない。彼には3人の女性を殺すという切羽詰まった事情があったとは思えない。殺意というものに囚われたものの行く末は、破滅でしかない。

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