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2011年10月25日 (火)

『龍は眠る』(宮部みゆき著) デビューしたばかりの作家も、少年と同じ目線で悩みながら筆を進めたに違いない

ある嵐の夜、雑誌記者の高坂昭吾は、道端で自転車をパンクさせ、立ち往生していた少年、稲村慎司を拾った。何となく不思議なところがあるその少年は、その道中で遭遇したある事故の真相を語り始める。「僕は超常能力者なんだ」。少年の言葉をにわかには信じられない高坂だったが、、、

宮部みゆきの初期の作品。特別な能力を持っている少年が、その能力と向き合う術を身につけていこうとする物語である。その特殊な能力を使って良いのか、使ってはいけないのか、人のために良いためであれば使っても良いのか、それでも使うべきではないのか、少年は悩む。

そしてこのモチーフは、『クロスファイア』という宮部作品につながっていく。特別な能力を持っている者が、その能力を正義のために行使することに「ためらい」を無くしたとき、悲劇は訪れる。この『龍は眠る』でも悲劇は訪れるが、そこには「ためらい」があり、ゆえに少年はギリギリの選択をし、精いっぱいにふるまおうとする。

単純な物語ではない。デビューしたばかりの作家も、少年と同じ目線で悩みながら筆を進めたに違いない。そして、あまり気づかないが、この悩みは特殊な能力をもたざる私たちにもあてはまる悩みである。自分は能力を持っておりそれを行使するのは当然だと思っているひとよりも、例えそれを持っていても「ためらい」を感じながら行使するひとの振る舞いの方が、「ためらい」がある分、ずっと相手の心に届くものだ。

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