『ブロードアレイ・ミュージアム』(小路幸也著) 古き良きアメリカの香りが漂う物語
この物語の舞台は、1920年代のニューヨーク。ブロード「ウェイ」ではなく、ブロード「アレイ」である。裏通りの小さな博物館“ブロードアレイ・ミュージアム”にキュレーターとして赴任してきた田舎もののエディ。古参のキュレーターたちは“ブロードアレイ・ミュージアム”の収蔵品に負けず劣らずの個性派ぞろい。
そして、物に触れると未来を予知できる不思議な少女フェイ。キュレーターたちは、フェイが物に触れることで見てしまった「良くない」未来が現実のものにならないように、あの手この手を使う。時にはかなりヤバイ橋を渡ることもある。彼らはまさしくお姫様を守る騎士団のようでもある。そして、新米のエディも立派な騎士に成長していく。
この物語に出てくる品々は、「サッチモのクラリネット」「ラリックのガラス細工」「ベーブ・ルースのボール」「シャネルの0番」「リンドバーグの帽子」など。古き良きアメリカの香りが漂う。
ボーナストラックの「ドラキュラのマント」はこの物語の後日譚。フェイが再び“ブロードアレイ・ミュージアム”を訪れす日がくるのだろう。そうすると、この物語は続編が期待できるのだろうか。楽しみだ。
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