『余震(アフターショック) そして中間層がいなくなる』(ロバート・B・ライシュ著) 資本主義はもはや「富が集中するように仕組まれたゲーム」であり、その暴走により格差はますます拡大し続ける
『暴走する資本主義』の著者ロバート・B・ライシュが、再びアメリカ資本主義の未来について警鐘を鳴らし、そしてより悪い事態に陥らないための処方箋について著した本。アメリカ経済がくしゃみをすれば日本経済は風邪をひく、と言われるように、アメリカ資本主義の未来は少なからず影響がある。この本はアメリカの未来についての本だが、それを日本に置き換えて考えることは可能であり有効だろう。
ライシュ氏は「資本主義はもはや『富が集中するように仕組まれたゲーム』であり、その暴走により格差はますます拡大し続ける」と主張する。その結果、豊かなアメリカを象徴していた中間層に、それに見合うだけの富が再分配されていない。富を独占した富裕層は富を貯め込み経済をまわさなくなり、中間層は海外アアウトソーシングにより雇用の不安が増し、賃金を抑制され、彼らが受け取るべき富を受け取ることができなくなっている。
オバマ政権は2008年の金融危機に対し、潰れそうな金融機関に公的基金を投入し金融機関を救済したが、それは急場のやむにやまれぬ対応としては機能したが、それによって問題の本質を見えなくしてしまった。そして抜本的に経済を立て直すチャンスを逃してしまった。
そしてもはや中間層が『富が集中するように仕組まれたゲーム』に気付いてしまった。もはや中間層は頑張れば報われるというアメリカンドリームを信じておらず、その不公平感や不満は閉そく感として政治的にも危険な方向に進むのではないか、とライシュ氏は懸念している。
その姿はまさに日本の姿と重なる。日本でも中間層、とくに若い世代はそれに見合うだけの富の再分配を享受できていないし、それが若者の活力を奪っているように思う。そして潰れそうな金融機関に公的基金を投入し金融機関を救済した結果、経済の立て直しが一向に進んでいない。政治的な混乱もあり、喪失した自信を取り戻せずにいる。
ライシュ氏はアメリカは自国にファッショ的な免疫がないので懸念しているが、それでも自由の国アメリカを信じているようである。日本が再びファッショ的な方向にいくとは私は考えていないが、喪失した自信を取り戻せないままにいると、社会不安はますます広がっていくのではないだろうか。
余震(アフターショック) そして中間層がいなくなる
著者:ロバート・B・ライシュ |
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