『アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】』(アトゥール・ガワンデ著) 「チェックリスト」は危機管理の基本。平時だけでなく予測できない非常事態にも有効
「チェックリスト」の効果については私たちは気づいているのだが、なかなか「チェックリスト」を作ろうとしないし、また「チェックリスト」を使おうともしない。
なぜか。理由は主に2つある。1つめは、「チェックリストなんてつけなくても大丈夫」、2つめは、「チェックリストなんて面倒くさい」である。しかし、それは、「チェックリスト」の持つ意義や効果をちゃんと評価していないからだろう。また、「チェックリスト」というと現場を知らない管理部門が自己満足のために押し付けてくるもの、という嫌悪感があるかもしれない。彼らの作る「チェックリスト」は、ときにあまりにも細分化されすぎて項目が多すぎたり、なぜこのタイミングでこのチェックをしなければならないのか、その目的がよくわからないものが多いからだ。チェックリストをつけることが目的になってしまっているからだ。むしろ、チェックリストを作って、チェックリストを使って、何をするのか、に焦点を当てて考えなければならないのだろう。
著者は外科医であり、医療ミスをなくそうと日々取り組んでいた。豊富な技術と経験をもつ医者でさえ、ミスを起こす。ミスは決して怠惰や努力不足によって起こるものではない。ミスをしたひとが無理をしすぎたからでも、無知だったからでも、無能だったからでもない。ひとはミスをするものなのだ。
それを補ってミスをしないためにはどうすればよいのか。それは他人の力を借りることである。他人を巻き込み協力をとりつける、その仕組みが「チェックリスト」である。
「チェックリスト」は平時だけでなく予測できない非常事態にも有効だと著者は言う。「チェックリスト」が危機管理の基本である。
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