« 映画『ブレードランナー ファイナル・カット』 「そんな記憶もみな、時とともに消えてしまう。雨の中の涙のように・・・」 | トップページ | 映画『ツリー・オブ・ライフ』 この映画を観ようと思っている方へ。冒頭からの予期せぬ展開に眠ってしまわないようにご注意願いたい »

2011年8月12日 (金)

『夜』(橋本治著)  男の不在が、女という存在を浮かび上がらせる

橋本治の短編小説集。最後の「暁闇」以外に共通しているのは、”男の不在”である。家から父親が出て行っていった娘や妻などが、”男の不在”によってその存在を浮き上がらせていく。というか、”男の不在”が女という存在を浮き上がらせる、というのがいかにも橋本治っぽい。
そして、最後の「暁闇」は、男と男の物語だが、男と男の物語であるがゆえに、男というものがいかに曖昧なものであるかということが浮かび上がってくる、というのもいかにも橋本治っぽい。

橋本治の小説は、ひととひととの関係性をいちいちいちいち説明してくれる。例えば「どうして」という発せられた言葉があったときに、その「どうして」の後に続く、発せられなかった言葉をいちいちいちいち説明してくれる。しかし、いちいち説明してくれるからといって、それが明確で明解なものであるとは限らない。ひととひととの関係に明確で明解なものはあるはずがない、といわんばかりに、いちいちいちいち説明されるものが、いかに曖昧なものであるか、ということを浮き上がらせる。

あとがきで、橋本治は『源氏物語』について触れている。通論では、光源氏と頭の中将の間に同性愛関係がなく、薫と匂宮の間に同性関係があると言われているが、それは全く真逆だと橋本治は言う。私は橋本治の『窯変源氏物語』でしか『源氏物語』を知らないが、『窯変源氏物語』を読むと光源氏と頭の中将の間に同性愛関係が浮かび上がってくる。光源氏の女を追い求める頭の中将の姿は、女を通じて、まさに光源氏に対して求愛しているように映る。

夜 (集英社文庫)Book夜 (集英社文庫)

著者:橋本 治
販売元:集英社
発売日:2011/06/28
Amazon.co.jpで詳細を確認する

« 映画『ブレードランナー ファイナル・カット』 「そんな記憶もみな、時とともに消えてしまう。雨の中の涙のように・・・」 | トップページ | 映画『ツリー・オブ・ライフ』 この映画を観ようと思っている方へ。冒頭からの予期せぬ展開に眠ってしまわないようにご注意願いたい »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

フォト

他のアカウント

2019年9月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          

気になる、気になる

  • ざっくばらん坊 on twitter
  • amazon
  • blogram
  • 人気ブログランキング
無料ブログはココログ