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2011年8月19日 (金)

『仏果を得ず』 (三浦しをん著)  いくら修行しても成仏しきれない、文楽とはそんな果てのない世界なのだろう

私は文楽を観たことがないので、文楽がどういうものかも知らない。でも、この小説は面白かった。

主人公の健は、技芸員上がりの文楽大夫。芸を極めようと修行中。師匠は人間国宝だがちょっと変わりものの銀大夫。その師匠から、三味線、兎一郎と組むように言われた日からこの物語が始まる。兎一郎もまた変わり者。プリン好きで、私生活は謎に包まれ、しかし芸には厳しく、芸を極めようとするところは健以上の鬼気迫るものがある。

文楽の修行はその芸をだけではなく人間修行でもある。その演じる役どころの人間を掴まなければ芸を極めることはできない。健に足りないものはその人間の機微を掴む経験。舞台の上では一心同体とも言える三味線、兎一郎との修行や、恋などを通じて健は人間として成長していく。

芸を極めたい。それは生半可な気持ちで務まるものではない。歌舞伎は梨園の生まれでないものは例え実力があっても頭打ちになってしまう世界であるのに対し、文楽の世界は実力だけがものを言う世界。生まれや育ちは関係ない。また、30年、40年と芸を積み重ねていかなければ芸を極めることができない。とにかく、長生きして、そしてたゆまなく修行を積まなければならないのである。

仏果とは、仏道修行の結果として成仏すること。しかし、「仏果を得ず」というタイトルは、修行の結果として成仏してもダメだ、ということである。いくら修行しても成仏しきれない、それが文楽の世界なのだろう。まさに、果てのない世界である。

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著者:三浦 しをん
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発売日:2011/07/14
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